瑠璃色の姫君
「……あ。失敗、した」
数秒後に聞こえてきた拗ねたような声に、僕は眉を下げて苦笑した。
決めてる人は僕ではないらしい。
残念、なんてね。
「フリュイ、そんなに泣いたら目腫れるよ。あ、ほらアレ見てみな!」
道端で、太陽に向かって顔を上げる黄色い花を見つけ、僕はそれを指差した。
ひっく、としゃくりあげながら、フリュイは僕から離れて僕の指の先を視線で辿る。
「タンポポ…?」
「そうだよ」
2人してその花の周りにしゃがみ込む。
黄色い花びらとギザギザした葉を見て、小さな頃のことを思い出した。
「そういえば、ずっと前にレティシアとタンポポで花冠を作ったことがあるな」
「タンポポで花冠?」
「そう。でもアレ、茎が潰れたり強く捻れると茎から白い乳液みたいな液が出てきて意外とやりにくいんだよ」
「……へえ」
そう、だから作るのが大変だった。
優しく、だけどしっかりと、組み合わせていくのが。
「出来上がった時はレティシアと2人で、ルリマツリの花園の中で走り回ってはしゃいだなぁ…」
タンポポの花冠をレティシアの頭に乗せると、黄色と金春色が瑠璃色の中を走った。
今は亡き祖父母が、城の中からその2色を笑いながら見ていたらしい、というのをよく人伝てに聞いた。