瑠璃色の姫君
「バベル、タンポポの花言葉知ってる?」
「知らない」
「“思わせぶり”って意味があんだよ」
「えっ!」
そんな。
そんな意味なんて知らなかった。
「王女にタンポポの花冠あげたんでしょ? どう思っただろうねぇ」
途端にさっきまで泣いていたフリュイがくすくすと笑い始める。
いやいや、多分あの頃のレティシアは花言葉なんて知らないよ。
多分、だけど。
「まあ、他にも意味あるからそっちの意味だったかもだけどね」
「じゃあ、ルリマツリは?」
シュトラント城にあるルリマツリの花園は、僕の特別な場所だ。
ここは是非とも聞いておきたい。
「うーん、なんだっけ、忘れた」
「えー、残念」
いいや、レティシアに会う前に花屋に寄ろう。
そこの店員に尋ねてみればいい。
またフリュイの手が、僕の手を握った。
すっかり泣き止んだ彼は、鼻歌なんて歌っちゃっている。
その曲は、よく幼い頃にレティシアと歌った記憶があって自然と口角が上がる。
なんだかさっきからレティシアとの思い出ばかり溢れ出る。
懐かしいなぁ。
もうすぐ会えるからなのかな。
僕の予想が合っていれば、絶対会えるんだから。