瑠璃色の姫君
「ちょーっとバベル」
「うん?」
「真似しないでくださいー」
「真似?」
何のことだ、と眉を上げる。
「はーなーうーたー」
「え、歌ってた?」
「歌ってたよ」
知らず知らずのうちに、フリュイの歌った鼻歌とつられて歌い始めた僕の鼻歌が重なっていたらしい。
そんな小さなことに少し嬉しくなる。
「なんかさ、鼻歌重なるって本物の仲良しって感じだよね」
「あーわかる………嘘わかんない」
わかる、と一度言ったくせに言い直して嘘をついたことにして、わからないと言うフリュイ。
そこは言い直さなくて良くない?
本当、照れ屋なんだから。
「あー今、“照れ屋なんだから”って思ったでしょ!」
「よくわかったね」
ほら、こうして僕のことをわかっているあたり、やっぱり仲良くなった証拠だと思うよ。
「ふーんだ! 別に照れてなんかいませんからぁー!」
「どうだか」
肩をすくめた僕はまた、鼻歌を歌い始めた。
ぷくっと頬を膨らませて口を尖らせていたのに、すぐに僕の鼻歌に重なってきたフリュイの鼻歌。
やっぱりなんだか嬉しくなって、僕は小さく笑った。