瑠璃色の姫君
スタスタスタ、と街中を走っていって、フリュイが花屋の前で立ち止まる。
「ほらほら花屋着いたよ! バベルは何買うのさ?」
そして、店の前で大声を出して僕を呼ぶ。
変わらぬペースで歩き、フリュイに追いついて静かに言う。
「内緒」
「はー、ずるいよ、教えてよ」
「内緒だっつの」
ずるいよ、じゃないだろ。
それを言うなら、フリュイは今まで秘密だらけで何度もずるいことしてきてるじゃん。
フリュイがぶすぅーとして地面にある石ころを蹴っているうちに、僕は店員さんに花を注文する。
注文し終えて僕は、フリュイに声をかけた。
「フリュイ、何の花が欲しいんだ?」
そう問えば、パタパタとこっちに寄ってきて、店員の背の高い女性を見上げた。
「おねーさん、ここのルリマツリください」
指差したのは、花屋の前の花壇に咲いている涼しげな瑠璃色の花。
シュトラントの街中では、花壇にルリマツリが咲いているのが特徴である。
花屋の前のルリマツリは毎度綺麗に咲いていて、それを少し譲ってほしいと言うらしい。
「プレゼントしたい人がいるんです」
フリュイは、お姉さんに懇願するように手を合わせる。
その様子に微笑ましそうに笑った店員さんのお姉さん。
「はい、よろしいですよ」
その答えに、パァッと輝くフリュイの表情。