瑠璃色の姫君
「何さ、その顔は」
「……なんでもないけど」
「嘘だ」
フリュイが、僕に人差し指を突きつけてくる。
初めから勘の鋭い奴だったけれど、旅を通して僕のことがもっとよくわかるようになったように感じていたのは、事実だったらしい。
面倒だな、そんなことどうでもいいや。
「それより、何故ここにいるんだ?」
走って行ってしまったから、フリュイは後にしてレティシアを見つけようと思っていたのに、先にフリュイを見つけてしまい僕は戸惑っていた。
パン屋に行ったのではなかったか? そう問おうとして、僕は口を閉ざした。
フリュイが、セイラのパン屋に行ったら必ず買う僕のお気に入りであるコロネを差し出してきたからだ。
「バベルこそ、王女にはまだ会ってないの?」
僕の質問への返事は返ってこず、投げ返されたのは質問だった。
ただでは僕の聞きたいことを教えてくれない。
そうだ、フリュイはそういう奴だ。
「会ってない」
そう答えれば、少しして「王女は、」とフリュイが声を漏らした。
「バベルには見つけられないと思うよ」
つかまえどころがなく飄々とフリュイがそう言うので、僕は途端に不機嫌になった。
今までの旅で、皆、きっと見つかると言ってくれたのに。
フリュイもそう思ってくれていると思っていたのに。
「なんで僕には見つけられないんだよ」
「なんとなく、かな」
「なんとなくでそんな風なマイナスのこと言うな」
「ごめん」
謝ってきたフリュイは、またヘラヘラと笑った。
「まぁ、見つけられるかどうかはバベル次第だよ」
なんだよ、それ。