瑠璃色の姫君
「それ」
次に僕は君がさっき跳ねた拍子に出てきた胸元のペンダントを指差した。
「えっ、うわっ」
慌ててそれを服の中に隠した君。
「……今の、見た?」
「見た。金春色のビーズの指輪を通したペンダント」
答えれば、君の顔が苦虫を潰したような表情になる。
僕の左手の小指にも、それと同じ種類で色違いの瑠璃色のビーズの指輪がある。
旅に出る直前、これを忘れて慌てて取りに戻ったほど大切な、幼き2人の思い出の指輪である。
「ねえ、後ろ首のアザは僕がつけたものだよね」
ビクリと君の肩が大きく震える。
かくれんぼしていて僕が転んだ時に僕を守ってくれて、そこに丁度石があったせいで出来た古いアザ。
「これの花言葉、“密かな情熱”って意味なんだって。知ってたんでしょ、だから最後にくれたんだろ?」
胸元のポケットのルリマツリを指差す。
君は顔を下げてしまった。
「道理で皆と仲良くなるのが早いわけだよ、会ったことあるんだもんね」
君は何も、言葉を発さない。
「そりゃあオリーヴェンの騎士から見つかっちゃいけないわけだよね、だって見つかったらオリーヴェンに連れ戻されるもんね」
一歩、後ろに下がってしまった君。
「僕が女の子と絡んでいるとすぐ不機嫌になったのは、嫉妬してくれてたんだよね?」
下げられた顔が赤みを帯びてきたのがわかって、僕は緩んだ口元を手の甲で隠した。
僕は眉根を下げて微かに笑って、君の顎を掴んで僕に目を合わせた。