瑠璃色の姫君




「本当に言わなくてもいい?」


「いいよ」



助かった、とでも言うように安心した顔をして僕に礼を言ってきたフリュイ。


こんなにホッとした顔をするのなら、何か目的には大きな出来事が関わっていたりするのだろうな。


そう考えると、より気になってくるのだが、旅をする中で仲が深まっていけば、いずれ話してくれるだろう。


その時まで、僕からは問い詰めることはしないようにしよう、と決意を固めた時だった。



ガレットが「バベルは良くてもさ、」と至って落ち着いた声でフリュイに微かに迫った。



「目的が教えられないのなら、フリュイは完全に素性の知れない者だよな」



確かに僕は、フリュイのことを何も知らない。


出会ったばかりだから、当然だけど。



「そうなると、シュトラント国民としては、うちの王子様を君と旅に出してあげるわけにはいかないな」



ガレットは、腕組みをしてフリュイを見下ろしながらそう言う。



「もしもだが、バベルを殺すことがお前の目的だとしたら、お前とバベルを共に旅に出すことは危険しかない。正直、俺は不安だ。承諾しかねる」



ガレットの言葉の意味に、自分の命の重さを感じて考えが甘かったことを痛感する。



「……っ」



フリュイは、下を向いて歯を噛み締め数秒思案したあと、腕組みをするガレットを見上げた。



「………それなら」


「なんだ?」


「信用してもらえるように、ガレットさんにはフリュイの目的を伝えます。バベルには言わないでください」


「……」



ガレットが、チラリと僕に目配せをした。


いいよ、と僕は頷いた。


もちろんすごく気になるけど、でもそれでガレットが信用できるのなら、いい。




< 19 / 248 >

この作品をシェア

pagetop