瑠璃色の姫君
「本当に言わなくてもいい?」
「いいよ」
助かった、とでも言うように安心した顔をして僕に礼を言ってきたフリュイ。
こんなにホッとした顔をするのなら、何か目的には大きな出来事が関わっていたりするのだろうな。
そう考えると、より気になってくるのだが、旅をする中で仲が深まっていけば、いずれ話してくれるだろう。
その時まで、僕からは問い詰めることはしないようにしよう、と決意を固めた時だった。
ガレットが「バベルは良くてもさ、」と至って落ち着いた声でフリュイに微かに迫った。
「目的が教えられないのなら、フリュイは完全に素性の知れない者だよな」
確かに僕は、フリュイのことを何も知らない。
出会ったばかりだから、当然だけど。
「そうなると、シュトラント国民としては、うちの王子様を君と旅に出してあげるわけにはいかないな」
ガレットは、腕組みをしてフリュイを見下ろしながらそう言う。
「もしもだが、バベルを殺すことがお前の目的だとしたら、お前とバベルを共に旅に出すことは危険しかない。正直、俺は不安だ。承諾しかねる」
ガレットの言葉の意味に、自分の命の重さを感じて考えが甘かったことを痛感する。
「……っ」
フリュイは、下を向いて歯を噛み締め数秒思案したあと、腕組みをするガレットを見上げた。
「………それなら」
「なんだ?」
「信用してもらえるように、ガレットさんにはフリュイの目的を伝えます。バベルには言わないでください」
「……」
ガレットが、チラリと僕に目配せをした。
いいよ、と僕は頷いた。
もちろんすごく気になるけど、でもそれでガレットが信用できるのなら、いい。