瑠璃色の姫君
「このお菓子の名前、知ってる?」
僕は、首を振った。
「パート・ド・フリュイ」
目を見開いた僕に、フリュイは照れくさそうに頬を掻いた。
「バベルの好きな物から名前をとったんだよ」
「そうだったんだ……」
フリュイの名前の由来をいつか聞いてみたいと思っていたけれど、そういうことだったとは。
旅に出る前から僕のことを想っていてくれていたことを感じて、嬉しさで頬が緩む。
そんな僕の口に、彼女がパート・ド・フリュイを突っ込んだ。
「あのね、バベルが私を愛してくれれば名前なんてどうだっていいの」
照れ屋な彼女が、微笑みながらふわりと僕に抱きついてきて、僕は慌ててそれを支えた。
「ずっとずっと、バベルが好きです」
押し付けるように、柔らかな唇が一瞬落とされる。
目前の出来事についていけずに目を丸くしていたけれど、彼女の甘い香りに包まれて少し自分の頬に熱を感じた。
遠くでチャペルのベルが式の予告をするように鳴った気がした。