瑠璃色の姫君
そうなると、子どものように元気でお茶目なレティシアだけではいられないのだ。
そうして、レティシアは場に応じた対応を身につけたのだろう。
要は王女としてのレティシアと、素のレティシアである“フリュイ”がいるのだ。
もう随分と目がぱっちりしてきたフリュイことレティが、僕の腕から抜け出そうとするのを阻止する。
「ねえバベル、アドルフに怒られてもいいの?」
そう言われて確認した時計は、いつもなら仕事を始めるために部屋を出る時間。
これはまずい。
そろそろアドルフが僕を仕事場へ連行しに来る。
旅の中で出会ったオリーヴェン騎士団元聖騎士アドルフは、その腕をかい僕の専属騎士としたのだ。
「あ、ほらほら足音」
アドルフの足音が聞こえてきて僕はため息をつく。
もう少しだけ時間をくれてもいいだろう、と言いたいところだが真面目な彼には通用しまい。
「おはようございます。バベル様、お仕事のお時間です」
「ほら来た」
分厚いはずの扉を越えてよく聞こえるアドルフの声に、眉を垂れ下げた。
どうやらここまでのようだ。
やむなし。
仕方がなので渋々、彼女を離した。
「質問、後で聞くね」
「……聞こえてたなら早く言ってよ」
今日は朝のイチャイチャタイムが短すぎた。