瑠璃色の姫君
僕の仕事場に、カリカリとペンを走らせる音だけが響く。
「あのさ、アドルフってさ」
「なんです?」
そのペン以外の沈黙を破り、アドルフに話しかける。
「オリーヴェン騎士団にいただろ」
「ええ、一応」
「てことは、僕の知らないレティシアを知ってるよね?」
書類から顔を上げて、僕が処理した書類を分別するアドルフを見る。
その彼の手が止まった。
「それを知って、どうするのですか?」
「別にどうもしない。気になっただけ」
なぜわざわざどうするのか聞いてくるのだ。
「旅に出る前のレティシア様を知りたい、と言ったところですか」
「そんな感じ」
さすが聖騎士。鋭い。
「どうしてそんなことが気になるのです?」
「旅に出る前最後に会った10年前からずっと僕はレティシアに手紙出してたのに、返事来なくなってたから。何かあったのかなと思って」
妙にもったいぶるな?
「なぜ結婚を済ませた今更なんですか?」
「だから気になったからだってば」
なぜそんなに言いたくなさそうなんだ。
「バベル様、仕事が滞ります。話は後にしましょう」
「いや、今だ。お前は何を知っているんだ。彼女に何があった?」