瑠璃色の姫君




「特に何もありませんでしたよ?」



平然とそう言うが、隠し事をしているの明確だ。


アドルフは隠し事をしている時、顎を撫でる動作をする。


目の前の彼はしきりに顎を撫でている。



「アドルフって、レティシアのことどう思っている?」



敢えて違う話を振った僕を、アドルフは真顔でありながら瞳を不思議そうに揺らして見ている。



「……レティシア様はマイハニーで」


「いくらお前でも殺るぞ」


「申し訳ございません。軽いジョークですからご安心を」


「当たり前だ」



たまにぶっ込んでくるその面白くもなくタチの悪いジョークが僕はあまり好まない。



「で、レティシアのことは?」


「こんなことを言うのはならぬと思いますが、レティシア様は私にとっては“妹”のような存在です」



言うと思った。


オリーヴェン騎士団に彼がいた頃、よく騎士団を勝手に出入りしていたレティシアと会っていたと聞いたことがあった。


事実、2人はなかなか仲が良い。


僕が思うに、アドルフはレティシアのことを考えた上で彼女のことを話そうとしないのかもしれない。



「……アドルフのそういうところ、嫌いじゃないよ」



ジョークがキツイのは嫌いだけれど。



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