瑠璃色の姫君
「えっ、どんなところのことですか?」
珍しくレティシア以外の人間を褒めたということで、アドルフが敏感に反応した。
面白いな、お前。
「仕事しなきゃ。今の気にしないで」
上手いこと交わして、僕は手元の書類に目線を落とした。
アドルフに聞くのではなく、直接レティシアに聞けばいいのだ。
時間を取ってくれると朝話したし、レティシアだったら話してくれるだろう。
僕が知らない、彼女のことを。
***
「うう、疲れた………」
兄様が出張中の今、兄様の分の仕事も僕の方へ来て今日1日働き詰めだった僕。
あまりの疲れでベッドに雪崩れ込んだ。
そのベッドには、既に眠っている彼女。
まあ当然である。
只今の時刻は、深夜2時。
シンデレラもお帰りになっている時間である。
要は、夜が明けて彼女が起きてからでないと、彼女のことを聞けないということだ。
すごく気になるんだけどな。
と言って起こすつもりはないのだが。
「暗い過去だったりしないといいけど」
彼女の柔らかな頬に触れる。
子どものようなあどけない顔で眠る彼女を見ていたら、胸がざわつき始めた。
そうだ、もし暗い過去だったらどうする。
聞いてしまってもいいのだろうか。
それで彼女が辛くなったりしないだろうか。