瑠璃色の姫君
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「バーベル!」
目を開けばすぐ前にあった桜色の瞳に、僕はびくりとした。
「なっ、……誰?」
「バベル王子、おはようございまーす。わたくしフリュイと申しますー。覚えておいでですかー?」
「……ああ、フリュイか」
そうだ、旅に出ているのだった。
一瞬誰だかわからなかった彼をしっかり認識した僕は、ぐっと伸びをした。
「あーよく寝た」
「だろうね。ガレットとの話が終わって戻ってきたらもう寝てたもん」
肩をすくめるフリュイ。
いつの間にか呼び捨てでガレットを呼んでいるあたり、僕が寝てる間に仲が良くなったのかな、なんて思った。
「あ。そうだ、お前ガレットとの話は?」
フリュイの目的とやらが僕と旅をする上で安全なものであるのかを、ガレットに教えることで、信用を得ることが出来れば僕と旅をしてもいい、とかってなるんだった気がする。
「それが……」
シュン、と眉をひそめて顎を引いたフリュイを見て、ダメだったか、と少し残念に思う。
「気を落とすなよ、フ」
「承諾してもらえましたー!」
突然顔を上げて大声で「わぁーい!」と、手を上げて万歳するフリュイ。
着ている深緑の服のはためき方が躍動感バッチリだ。
「は?」
「はい拍手〜〜!」
「え、なに」
「やっふーい! バベルと旅出来る!」
「おい、フリュイ」
「やったーバベル騙されたぁー!」
2つの意味で喜びまくるフリュイにイラっとしながらも、旅が一緒に出来ることに関しては、微かに自分の中で嬉しさが込み上げてきていた。
フリュイの指示で枕元に置いてあったガレットが用意してくれたのであろう、いかにも旅人らしい服に着替えた僕は鞄を掴んだ。
「ささ! 朝ごはんにしよ!」
ひとしきり飛び回ったフリュイは、僕の手を取り、ぐいぐい引いた。