瑠璃色の姫君
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チュンチュン、と軽やかな鳥の鳴き声に目が覚めた。
ぐんと伸びをして、まばたきをする。
「あ、ふふ」
いつも通りに隣を見て、思わず笑みがこぼれた。
「うそつきだなー」
すやすやと寝息をたてる僕の愛しきお嫁さん。
頬をつつくと、軽く身じろぎをして、むくりと起き上がった彼女の意識はまだ虚ろ。
「おはよう、バベルぅー。まだ寝てていいんだよー」
「ん? そんな時間はないけど」
「ううん、あるのだー。奥さんが起こすまで旦那さんは寝てていいのー」
「いや本当に時間ないけど」
「レティがカーラとアドルフにデートしに行っていいよ、って休暇をあげたから、だいじょぶ!」
「そんなこと聞いてないんだけどな⋯⋯」
未だに寝ぼけている彼女が言ったのは予想もしなかったことだけど、そんなに簡単に仕事の休暇許可が下りるわけがない。
だけど妙に胸騒ぎがしたもんだから、僕はベッドサイドにある室内電話に耳を押し付けた。
電話に出たのは、あの旅の中でレティに化けて彼女の言葉を僕に伝えに来たレティの侍女クロエだった。