瑠璃色の姫君
でもね、ここで負ける僕ではないのだ。
いつまでもレティシアの尻に敷かれている僕ではないのだ。
「じゃあ、無理やり向かせるから」
「はいっ?」
「あ、向いた」
「あ、しまった!」
慌てて顔を戻そうとする彼女の顔を両手で包み込んでとめた。
なーんだ、意外と簡単にこっちを向いた彼女に笑う僕。
そういう素直なとこが、いいよね。
「ねえ、レティ」
「嫌ですっ」
あーあ。
手で口を押えられてしまった。
でもね、さっきも言ったけど、ここで負ける僕じゃないのだ。
僕らしくないかもしれないけれど、今日は貪欲にぐいぐい行きたい気分なのだ。
というわけで、自分の口を押えるレティの手に口付ける。
「ちょっと、バベル!」
「ん?」
「そこ手! 口じゃない!」
「ん、知ってる」
「じゃあくすぐったいからやめて」
「じゃあその手どかして?」
「………」
あれ、珍しくすぐに反論が来ない。
………あ、可愛い。
唇をとんがらせているであろうレティが耳を朱に染めていた。
「バベルのばか」
くぐもった声に僕はくすり笑う。
どうやら僕の勝ちのようだ。