瑠璃色の姫君
渋々って感じでゆっくり外されたレティの手。
ほんのりと色の乗る唇が現れる。
「うわ、なんかドキドキする」
最近キスなるものは、口を外したところにしかしていなかったため、妙に胸が鳴る。
ちなみになぜ口を外してばかりかというと、レティがそうさせてくれないからだ。
恥ずかしがり屋でツンデレな彼女と一緒になるとこうなるのだ。
「そゆこと言うな、バベルのばーか!」
ドキドキが伝染したようで、レティがそれを隠すように毒を吐く。
隠しきれてないし、それも微笑ましくて僕のドキドキが増加しちゃったんだけどね。
「口の悪いお姫様」
「うるさいっ」
「そんなお口は僕がふさいであげましょう」
「何その言い方、気持ち悪っ」
「………ほんと口悪いね」
「だって、」
まだしゃべろうとする彼女の口を強引にふさぐ。
「だって、何?」
離して、目を覗き込んでそう尋ねる。
彼女は「なんでもない」と噤んだ。
「ダメ、気になる。教えて?」
「嫌」
「お願い」
手を合わせてねだれば、小さく何かを言われたけれど、残念ながら聞こえなかった。