瑠璃色の姫君
「ごめん、もう一回」
「口悪くしたら、ふさいでくれるんでしょ?」
「あ、うん、…………うん!?」
びっくりして固まって、それから彼女を離して背中を向けて、わあああと悶える僕。
あのね、そういうのを突然ぶっこまれちゃ困る。
好きが止められなくなるじゃん!
「バベル」
「ううううう、っと何?」
振り返ると柔らかい感触が唇にふにゃりとあたった。
「へ」
離された口から出たのは何ともまぬけな声。
「今日はまだ始まったばかりなのにそんなんじゃ、私が困る」
赤みがさした顔のレティが、むっとして小さな声つぶやいた。
「今日はイチャイチャするためにお休みにしたんだからっ」
「うん」
「バベルに好きを伝える日にしようと思ってんだから!」
「………泣きそう」
彼女が仕掛けたもの全てにまんまと引っかかった僕は、その悔しさや彼女からの愛を感じて泣きながら笑って、彼女を抱きしめた。
「こんなことで泣くなんて、やっぱりバベルはばかだね」
「うるさいよ」
楽しそうに笑う彼女の口を、すかさず僕のそれでふさいだ。
口づけながら、微かに目を開けると彼女と視線が絡んだ。
レティがちょっと照れたように目を細めたから、僕も同じように細めて、もっと強く彼女を抱きしめた。
君が僕の隣にいる奇跡に、この幸せに、感謝を。
*番外編 君がいる幸せ fin.