瑠璃色の姫君
昨日3人で話したあの部屋に連れてこられた僕は、キッチンに立つガレットと目が合った。
「おはよう」
「おはよ、ガレット」
フリュイに席に座るよう促されて座れば、ガレットとフリュイも席に着いた。
「バベル」
「何?」
手を合わせてから、ガレットが机の上に用意してくれたパンをかじる。
ガレットは僕をまっすぐ見て言った。
「フリュイの目的はバベルの命じゃなかったから、安心してくれ」
「わざわざありがとう。お前を友人に持てた僕は幸運だよ」
シュトラント国民として、誇れることをガレットはやってくれた。
自分の命の重さを知るいい機会になって僕にいい影響を与えた行動でもあったし。
フリュイの目的を知らないと一緒に行かせられない、という考えは素晴らしいと思った。
「それで、提案なんだが」
「提案?」
「ああ」
隣に座るフリュイがガレットを不思議そうに首を傾げた。
「俺も旅に同行させてくれ」
「えっ?」
思わず聞き返した僕。
その肩にどんっと手を置いたのは、フリュイだ。
「だーめーでーすぅー」
声を間延びさせて、眉を寄せてガレットを睨むフリュイ。
ガレットは、不満気な顔をした後、懇願するように小声で「そこをなんとか」と言った。
変だな?
妙に下手だな。
「いや、ガレットは大きすぎて野宿の際のテントに入れないからダメです。ねえバベル。持ってるテントちっちゃいもんね?」
「……ちっちゃいけど」
「俺のテントならここに……チッ、壊れてるんだった」
「はいっ、残念でした!」
ふふん、と勝ち誇るフリュイ。
悔しそうに顔をしかめるガレット。
よくわからない不思議な光景にただただ目を丸くした僕はとりあえず「フリュイの一存で決めるわけにはいかない」と2人に言った。
「えーと、ガレットはなんで旅に同行したいんだ?」
疑問点を直球で聞き出してみると、ガレットは言葉を濁した。
「なんでって、それは、えーと、オリーヴェンにいる友人に会いに行こうかな、と」
……それ、ほんとか?
嘘っぽいガレットの目的に、ジト目になった。