瑠璃色の姫君
肌寒い外から室内に入ると白い息がふわりと暖かい空気に紛れて消えていった。
ノックをして、重たい扉を力任せに開ける。
ちなみにいつも私についてくれているカーラのことは何とか撒いて置いて来た。
「バベル」
「あれ、リーシャとお茶していたんじゃなかった? どうした?」
私の顔を見た旦那さんであり一国の王子でもある彼は、難しそうな書物から顔を上げ目を丸くした。
いつも彼の公務に付き合っているアドルフはどうやら今はいないらしい。
ラッキーだ。
確かに、久しぶりに会ってリーシャとお茶をするがてらお話をしていた。
リーシャお手製のココアは相変わらずの最高の出来で、リーシャの恋バナに花を咲かせていたりしていた。
「あー僕も呼んでって言われた?」
「言われてない」
「あれ、そう?」
とんだ勘違いをしてしまった、と恥ずかしそうにするバベル。
………かわいいな、なんちゃって。
ふふ、と緩む口元を隠す私。
実を言うと呼んでと言われていたりするわけではあるのだが、まあいいの。
「レティ、何笑ってんだよ?」
「今、時間ある?」
「なくてもレティの為なら作るよ」
どきん。
そういう不意打ちはずるいと思う。
私のためになら時間作るって、どんなイケメン発言だ。
どこでそんな格好いい言葉を覚えたんだ。