瑠璃色の姫君
まあ今はいいの、そんなことは。
不貞腐れている時間なの。
バベルが構ってくれないんだもん。
「レティ」
頭上から柔らかな声が聞こえて、反射的に顔が上がった。
「レティシア」
「……何よ」
私が顔を上げたことを嬉しそうにしているバベルに、彼の声だからと顔を上げてしまったことが恥ずかしくなって私はもっと身を丸くして小鼻を膨らませた。
「はい、どうぞ」
「え?」
目の前に出されたのは、私がバベルの部屋でお茶をするときに使う彼とお揃いのカップ。
あれ?
ダージリンを飲むんじゃなかったの?
「あったかい内に飲んで」
にっこり微笑む彼は、私にカップを手渡した。
ゆっくりと暖かくなっているカップの中身を見てみると、チョコレート色が顔を出した。
「……ココア?」
「うん」
「なんで?」
「飲みたいと思ってたでしょ?」
「え、いや、」
そんなこと思ってたっけ?
……特には、思ってない。
じゃあこれは何?
「いーから飲んで」
ストンと彼が私の横に座る。
ソファが彼の重みの分だけ沈んだ。