瑠璃色の姫君
しみじみとそう言う彼は、旅に出る際に〝レティシア〟が他の誰かにさらわれたのだとしたらどうしよう、と考えて旅を決意したのだとか。
「バベルったら、何言ってんの?」
「僕のお姫様はやっぱり最高にいいなぁ、と思ってね」
にっこにこと笑ってバベルが私の手を引く。
何が最高にいい、だ。
デレデレしすぎだ。
シュトラント第二王子がこんなんだと知ったら国民に笑われちゃうよ。
って、街に出ているせいでよく噂される彼のことは殆どの国民が知っているかもだけど。
なんて考えていたらストンと座らされた。
場所は、バベルの開いた足の間。
「髪、伸びたね」
ふわり髪を撫でられて、ぴくりと肩が動く。
その髪をすくわれる。
「ぎゃっ」
首にふぅ、と細く息が吹きかけられた。
「何す……っ、」
ちぅ、と音が鳴る。
思わず鳥肌が立ち、背筋がしゃんと伸びた。
ふふ、と楽しげな笑い声が背後から聞こえる。
やめて、そう言って振り返ろうとしたら、お腹に左手を回され右手で後頭部を押さえられた。