瑠璃色の姫君
はぁ、とため息をつくジル兄さん。
これは兄さんが折れてくれた時の合図。
「……2人でいる時だけですからね」
仕方なさそうに、だけどちょっと嬉しそうにそう言うジル兄さん。
2人だけ、というフレーズに頬がゆるゆる。
みんなに内緒の2人だけの秘密。
そうまでして、私の言うことを許してくれる。
そんな優しい兄さんが私は大好き。
「ジル兄さんっ」
「え」
ぴょんと兄さんの方へ飛ぶ。
慌てて広げられた腕の中に飛び込んだせいで、スカートがふわふわする。
ジル兄さんは慌てながらも私をきっちり受け止めてくれた。
「ジル兄さんだーいすき」
「……危ないのでもうしないでくださいね、お嬢様」
「……、はぁい!」
飛んできた私の体は受け止めてくれても、気持ちは受け取ってもらえない。
これまでで、何度もこういう肩透かしにあってきた。
ジル兄さんは、〝すき〟を返してくれない。
私と同じ大きさの〝すき〟でなくてもいいのに、〝すき〟自体を返してくれない。
だけど、それだけで私の〝すき〟は止まるほど軽いものではない。
心の中では悲しみながらも、私はニコニコとジル兄さんに体を預けたまま笑う。