瑠璃色の姫君




ぎゅう、と力強く抱きしめられて、慌てるなんてもんじゃないくらい動揺する。



「ちょ、ちょっと! ジル!」


「違うでしょう。〝ジル兄さん〟でしょう?」


「え」


「寝言でそうおっしゃったでしょう。幼い時の夢でも見ていたのですか?」


「ええ、そうよ」


「あの時の〝お嬢様〟はとても素直で愛らしく」


「待ちなさい! あの時だけなの!?」



後ろから抱きしめられたまま、ジルの方を見ようと出来る限り首を右に回せば、ジルが顔が見やすいように右側から顔を出してくれた。


ジルは基本的にポーカーフェイスなのに、緩めた頬で柔らかく笑った。



「……ちょっと何か言いなさいよ」


「申し訳ございません、今のお嬢様が可愛すぎて言葉が見つかりません」


「……っ、は?」



意味がわからなさすぎて思考停止。


思考回路が巡り始めると、とりあえず恥ずかしいからジタバタと彼の腕の中で暴れてみせる。



「お嬢様、落ち着いてください」


「お、〝お嬢様〟なんて最近ずっと呼んでないじゃない」


「ええ、そうですね」



暴れたせいで、お腹に食い込む勢いでジルの腕が強く回された。


こんなところお父様に見られたりしたら、どう言い訳をすればいいのやら。



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