瑠璃色の姫君




何年かぶりに聞いた〝お嬢様〟呼びに、なぜかズキンと心が痛んだ気がした。


なんだか、すごく身分差を感じてジルが遠い人のように感じてしまったからだ。




「ジル。なんで〝お嬢様〟って呼ぶのやめたのよ」


「それは、その…〝お嬢様〟ではなくお名前でお呼びしたくて」



どきり、胸が鳴る。


じわじわと胸に温かいものが来る。



「……ま、待ってちょうだい。これ無理だわ、無理よ!」


「無理、とは…」


「ジルの言葉が嬉しすぎて、顔があつくてたまらないの、もうその、無理なのよ!」



顔を手で覆った私をジルがくすくす笑って私の体を反転させて、向き合う形になった。


ジルって、こんなに笑うやつだったかしら?


指の間から彼が笑う姿をチラ見していると、優しくその手を顔から離されて赤い顔が隠せなくなった。



「あのですね、私も〝ジル兄さん〟よりも〝ジル〟とロゼア様に呼んでいただいている今の方が嬉しくて好きなのです」


「えっ」


「その〝兄さん〟だと恋愛対象外という気がして、少し悲しかったので。といっても〝兄さん〟呼びは幼い頃だけでしたが」


「え、え?」


「私、ロゼア様に支え始めた時からロゼア様に恋していますので」


「な、何を言ってるのよ」


「本当のことですよ」



さらりと言うくせに、耳が真っ赤。


何よそれ、可愛くてたまらないわ。



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