瑠璃色の姫君




……近い!


近すぎて気付かれないよう、無意識のうちに呼吸さえするのを控える。


こんなに息がつまったことは今まで一度もない。


剣の大会で味わった切迫とは違って、苦しい。


ひたすら、あまり息をしてはダメだと言い聞かせる。



「……っ、」



状況が辛くて「なんで僕こんなところで隠れているんだっけ」という想いが掠めた。


だけど、ふと彼を見たことで、自分のことなんてどうでもよくなった。



フリュイが、汗を垂らしてじっと息を殺していたからだ。



なんで、そんなにまでして隠れているんだ。


この人達とはどういう関係なんだ。


旅に連れて行ってほしいと懇願してきた時の子どもらしさが全く感じられない、その真剣な表情の原因は何なんだ。



「レティシア王女、どこ行ったんだろうな」



お昼を頬張る騎士の男が困ったように言えば、何故かフリュイの顔がピシッと固まった、ように見えた。



「王女は有り余るほどの活力を持ってるから、どこまでも行きそうだよな」


「そうそう。飛び出されると必ずと言ってもいいくらい困るけど、自分に素直なお方なんだよな。そこがまた愛らしいところだよな」


「本当。王女と結婚するのって隣国のバベル王子だよな、王子と一緒になることで王女が落ち着けばいいな」


「そうだな、幸せになってほしいな」



騎士2人が朗らかに喋る話にジーンとして、ちょっと涙目になった僕。




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