瑠璃色の姫君
何ちょっと大人ぶってるんだよ。
生意気もいいところだよ。
一国の王子からの感謝は高いんだからな。
なんてね。
フリュイがどんな顔をしたかはわからないけれど、そんな風な彼らしい照れ隠しが返ってきて思わず口角が上がった。
そんな僕に「やめて、キモいよ」とグサリと釘を刺してきたことは無かったことにしような、フリュイよ。
「ところで。王女の走るスピード、落ちてきてない?」
「疲れてきたのかな。チャンスじゃん」
緩んだ口元を引き締め、僕は走るスピードを上げた。
近くを駆ける馬に乗る騎士はやみくもにレティシアを探しているようだが、未だレティシアの行方を知らないらしい。
本当に、チャンスだ。
ぐんぐんスピードを上げる僕に、フリュイの足音がだんだん遠くなる。
僕の速さについていけないらしい。
振り返り、フリュイを見れば「先行って」と少しだけ辛そうに顔を歪められた。
僕は了解の合図として手をひらりと上げた。
シュトラントの騎士にビビって変装してるのに無駄に走ったあの時、息を切らす僕を見てフリュイが『おじいちゃんみたい』と言ったのを思い出す。
「おじいちゃんなめんなよ!」
地を蹴って走り、だいぶ近付いたレティシアに手を伸ばした。