瑠璃色の姫君
あと、少し。
あと少しで、レティシアを……。
「バベル行けぇぇぇぇえ!」
フリュイの大声が木々を揺らす。
縮まったレティシアとの距離を飛ぶように大きく一歩踏み出して、詰めた。
「レティシア!」
少々手荒だと思ったが、そのレティシアの瑠璃色を伸ばした右手で引っ掴んだ。
「痛っ……」
レティシアの悲痛の声が聞こえて、心の底から申し訳なくなる。
「ごめん。僕だよ、バベルだ……うわっ」
言い終わる前に、レティシアが僕を振り切って逃げ出した。
すぐに追いかけようとした僕は、右手に感じた感触に目を落とし、呆然と足を止めた。
「ちょ、レティ……え?」
僕の手には、ふわふわとした瑠璃色の髪。
前方には、逃げ出した…レティシア?
それらをそれぞれ二度見する僕。
「待て!」
そんな呆然とする僕の横を、フリュイが力を振り絞るかのようにすごい勢いで走り抜けていく。
それを目で追うと、フリュイより少し前を走るはずの瑠璃色はなかった。
あったのは、揺れる鮮やかな金色の髪だった。