瑠璃色の姫君
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「君は一体誰なんだ」
さっきの場所から少し遠くに離れ、騎士達が来ないよう馬が通れなさげな細い窪みに僕とフリュイと、レティシアになりすましていた人間の3人はいた。
道理で声が違うわけだよ。
違う人間の声なんだから当たり前だ。
フリュイが意地でとっ捕まえたボブの金髪の女性を、僕らはジロジロと穴があくほど見つめる。
「これは、どういうことなんだ」
僕は瑠璃色の髪が垂れ下がる “カツラ” を金髪の者の前に掲げた。
「……あの、外してください」
「どういうことなんだ、と聞いているんだけど?」
金髪が紐で拘束されて背中に回されている手を外してほしいと懇願してくる。
拷問のように見えるだろうけれど、こやつは勝手に王女レティシアを名乗っていたのだ。
それくらいされてもおかしくはないと思ってほしい。
「……」
「黙秘権が使える立場だと思ってるのか?」
一向に話そうとしない金髪に、そう言えばフリュイが首根っこを摘んだ、首輪をしたネズミに刃物を軽く突きつけた。
「こいつがどうなってもいいのか?」
「……っ、」
そのネズミは、金髪のポケットから飛び出してきたやつだ。
かなり手荒なことをしているのはわかっているし、こんなことしたことがないけれど、レティシアのためだ。