瑠璃色の姫君
「そんで?」
「ルリマツリの花園の中で、本を読もうと思って花園の中にあるチャペルの中にあるベンチに向かってたんだ」
「うん」
「そしたら、そこに着く前に何か蹴っちゃってさ」
「それが王女だー!」
頷いた僕は、当時のことを思い出す。
大好きなルリマツリの花園の中で見つけた少女は、その瑠璃色の髪がルリマツリの花に隠れて、見えていなかったんだ。
その少女は、ルリマツリの香りに包まれていて。
「そこで寝てたんだよね、レティシア」
「そうなの!?」
「うん」
ルリマツリに囲まれて眠る彼女は、今まで見た人間の中で断トツで綺麗で。
伏せられた長い睫毛ときめ細やかな白い肌は、人形かと思うほどで。
それでいて、すごく儚く見えて。
僕は、彼女を守ってあげたい衝動に駆られた。
僕が、守ってあげたいと思ったのだ。
それまで他国の令嬢やら姫君と会わせられたことがあったけれど、彼女ほど僕を惹きつけた人はいなかった。
多分、……絶対、一目惚れだった。