瑠璃色の姫君
その顔を覗き込んできたフリュイが口を押さえてぷぷ、と笑う。
「なんか、ほんっとに好きなんだね」
それから、どこか遠い目をして他人事のように言う。
実際、他人事だけど。
「表情でも」
グイッと頬の肉をフリュイの両手でムニッと摘まれる。
地味に痛い。
「声でも」
フリュイの指に軽く力が加わり横に伸ばされる。
イタイ、イタイってば。
「すごいレティシアが好きって伝わるよ」
フリュイの指が離されて頬が解放される。
痛え。今絶対、痛みで顔赤いよ。
ひたすら頬をさすって唇を歪ませる僕は、フリュイの表情がどんなものか見ていなかった。
見ているはずもなかった。
フリュイがさりげなくレティシアを呼び捨てで呼んだのさえ気が付かなかった。
フリュイが計画的に、僕の頬を引っ張ったから。
痛みに意識を向けさせて、フリュイから視線を逸らさせようとしたから。
自分の顔を見せないように。