瑠璃色の姫君
そんなことに全く気付かず、僕はただただ頬の痛みと1人戦っていた。
「あーもう! すごい痛いんだけど!」
王子の顔に手を上げちゃダメだろうが、クソガキめ。
頬の痛みが少しおさまったので、僕はフリュイを睨みつけたのだが。
フリュイは、顔を手で覆っていた。
何、どうしたんだ。
「フリュイ?」
「!」
「どうかしたか?」
「い、いや。何でもない」
明らかに様子のおかしいフリュイ。
さっきから一体なんだ?
「さ、カフェ・レヴまであと少しだよ。行こう行こう」
顔からシュッと手を離し、スタスタと歩き出す早さは少し早足だ。
「フリュイ、何か怒ってんの?」
僕はその背中に向かってそう聞く。
「怒ってなんかないよー」
明るい声が聞こえてくるが、やっぱりどこかおかしい気がする。
なんなんだよもう。
訳わかんないよ。
あ。
フリュイの肩に乗るルディが、僕を見つめてきた。
ルディのビー玉のような瞳から、心配無用だ、と言っているのがなんとなく伝わった。