瑠璃色の姫君
リーシャはいたたまれなくなったのか、そのフリュイの視線と微妙な空気から逃れるように背を向けて、お茶の用意を始めた。
「さ、えーと! バベルはダージリンですよね! そちらさんは、何がいいですかな!」
場を収めようとしてくれるリーシャからメニューを手渡され、フリュイはむすっとしたままそれを広げた。
僕がダージリンを好むのを分かっているのは、ここに来た時はいつもそれを頼むからだ。
故に、既にリーシャはそれをリサーチ済みなのだ。
メニューを一通り見たフリュイは、リーシャに向かって口を開いた。
「ホットココ……」
「はぁい、ホットココアですねー」
「あ、違います。ロイヤルミルクティーにしてください」
ん?
ココアと言ったくせにミルクティーに変えたフリュイ。
ちょっと大人ぶったのかな?
ロイヤルミルクティーだって十分甘いんだけどさ。
「本当にココアじゃなくてよろしいんですか?」
くす、と笑ったリーシャがフリュイに確認する。
「いいんですっ」
プイッとしてそう言うフリュイ。
子供だなぁ。
別にココアでもいいのに。
「可愛いですねぇ、小さな美少女さん」
「ん? リーシャ、こいつ男だよ?」
リーシャが言った “美少女さん” が引っかかり、僕はそれを訂正した。
だって美少年、て最初呼んでたんだよ。
訂正してこなかったもん。
中性的な顔立ちだから、女の子に見ようと思えば見れちゃうけどさ。
ほら、騎士に追われそうになった時のあの走力とか、女の子だと思えないよ。
状況判断の高さとかさ、地図がよく読めるのとかも、女の子だと思えないって。
あとさ、ルディって、女の子が苦手なんだよ。
フリュイの肩にはすぐに乗ったじゃん。
だから女の子なはずないんだよ。