瑠璃色の姫君
フリュイは右頬をピクリと一瞬引き上げて、何事もなかったかのように出されたミルクティーに口をつけた。
「フリュ、」
「バベル」
フリュイ、と呼ぼうとしたら、リーシャに止められて怪訝な顔の僕が彼女の瞳に映された。
「えーと、フリュイさん?」
ニコッと優しげな笑みを浮かべて、リーシャが僕の帽子を引っ張った。
帽子からさらりと僕の金春色の髪がこぼれ落ちる。
「会えたの久々なので、バベルと積もる話をしてきても良いですか?」
フリュイはカップから口を離し、リーシャを見て小さく頷いた。
何故かフリュイは、僕のことを意図的に視界に写そうとしてなかった、ように思えた。
なんで?
訳がわからない。
どうして突然避ける?
頭を駆け巡るのは「なんで」ばかり。
そんな僕をリーシャは、多少強引に背中を押して、二階の部屋に連れ出した。
***
「バベル」
「なに」
「あの人誰なのですか?」
訝しげにして、腕組みをするリーシャ。
質問タイム開始のゴングが鳴る。
知りたがり屋のリーシャは、こうなると質問が止まらないのだ。
ピンクを基調とした可愛いお部屋に似合わないその顔は、どうも僕を心配してくれているみたいだ。