瑠璃色の姫君




階段を降りながら、リーシャに尋ねる。



「そういえば、オーナーはどこ行ったの」


「今は夫婦揃って旅行に行ってて」


「じゃあ、1人で店番してんの?」


「いや、ゼノと一緒に」


「え、本当?」



頷いたリーシャ。


仲の悪かったゼノとリーシャが同居?


ゼノは、リーシャの幼馴染でよくこの店に遊びに来ていた。


その際、幼かった僕とレティシアと会うこともあって、顔見知り、というか、友達? というか。


確か、彼は僕にすごく懐いてた。


なんだか、懐かしいな。



「ゼノはどこにいるんだ?」


「店の裏で薪を割ってくれてます」


「じゃあ、手伝いに行ってくる」



その間にフリュイと話しておいて、と口添えして、階段を降り切る。



「あ! バベル!」



ルディを肩に乗せたまま肩を上げて緊張した顔をしたフリュイが、少しだけ肩を落とした。



「おー1人にしてごめんなー」


「よ、余裕だよっ」



緊張が解けて緩んだ彼の頬が、またヒュイッと上がる。


強がるフリュイが、なんだかフリュイらしくて笑いそうになった。



「僕、店の裏で薪割りしてくるからまたいなくなるけど、大丈夫?」


「大丈夫だよっ。でもフリュイも行くよ」



すかさず付いてこようと椅子から腰を浮かしたフリュイを押して、座り直させる。



「ゆっくりしてなよ」



帽子をリーシャから受け取り、ぎゅうっと引っ張る。


金春色の髪が、隠れていく。




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