瑠璃色の姫君
「バベル、外気をつけてね」
店を出る直前にフリュイがかけてきた声は、僕にやんわり拒否されたからか、少し不機嫌。
綺麗な女の人に話しかけられても付いて行っちゃダメだよ、と付け加えられる。
「レティシアだったら付いていくけどね」
振り向かずに、パタン、と扉を閉める。
今からあのリーシャからの質問攻めにあうかと思うと、フリュイに対してすごく申し訳なくなるけど、それで彼の秘密が小さなことでも知れたりしたら、と淡い期待がよぎる。
どうせリーシャもガレットみたいに、聞いても頑なに秘密は守るんだろうけれど。
まあいいさ。
それでリーシャが彼のことを信用できるなら。
目的を果たしてもいないのに、ここまで一緒に来てくれたフリュイとさよならなんて嫌だからさ。
店の裏に回り込んで見えた後ろ姿。
「ゼーノ」
記憶の中のそれよりもかなり大きくなっていて、驚いたと同時に嬉しくなった。
「え……わっ、バベルの兄ちゃん!?」
目をまん丸にしたゼノが、僕を指差した。
こら、人に指差しちゃいけません。
ゼノの腕を僕の手で下に下げて「でかくなったな」と彼の頭を撫でた。
「えへへ、だろ?」
「んーでも僕の方が高いかな」
1つ年下なだけな割には、かなりあった身長差が殆どなくなってしまっていた。
それでも、僕の方が微かに高い。
「うぅ、悔しい」
ぷくっと頬を膨らませたゼノ。
どうやら精神の方はあまり変わっていないらしい。