瑠璃色の姫君
体温計をフリュイの口から引き抜いて、僕は彼の頭を撫でた。
「おやすみ、フリュイ」
僕のかけた声を合図にしたように、ゆっくりとまぶたが落ちてきてフリュイの瞳が閉じた。
子供らしさか見える寝顔を見ながら、フリュイの茶色のくるくるした髪を人差し指で巻く。
それを離してまた寝顔を眺め、僕は薄く笑った。
「ゆっくり休んでね、フリュイ」
勝手に付いてきた少年のことに、少しずつ愛情が湧いてきていることに気付いて、知らないふりをした。
***
「兄ちゃーん」
「フリュイ寝ました?」
扉を薄っすら開けて、心配そうな顔を出した2人に僕は頷いた。
ちょいちょい、とリーシャが僕を手招きする。
ん?と思いながらゼノが差し出した水タオルをフリュイの額に乗せて、リーシャの方へ近寄る。
ゆっくりあまり音が立たないように扉を閉める。
「バベルに話があるんです」
「あ、でもフリュイを1人にするのは…」
「だいじょぶ、俺が看てるから」
ゼノがにーっと僕を安心させるように笑って、僕らの背を押した。
「いいのか、ゼノ」
「いいよ。リーシャの話、大事なことみたいだし?」
ひらひらと手を振って、ゼノはフリュイが眠る部屋の中へ入っていった。
それを見届けたリーシャは、大事なことなんて一言も言ってないのによくわかったものです、とぼそりと呟いた。
まさに以心伝心という関係なのだな、と解釈して僕はかすかに苦笑した。
彼らは口では仲が悪くても、本当は抜群に相性がいいのだ。
「さて、話ですが」
階段を下り、先ほど座っていたカウンターに座りなおした僕。
リーシャは、一度カウンターの中へ入り蓋に色とりどりの鳥が木に止まっているデザインの箱を手にとって、僕の横に座った。
カウンターの中に居なくてもいいのか?と思ったが、店の扉に【close】の看板が付いているのを見つけて納得した。