瑠璃色の姫君
それじゃあ、何故?
「レティさ、バベルなら見つけてくれるって笑ってたなぁ」
え……?
優しげな声で話し出したリーシャに顔を向けた僕は、彼女の手を掴んだ。
「それって! それって、ここにレティシアが来たってこと?!」
「え、あ……」
リーシャは、しまった、とでも言うように目を伏せて眉根を寄せた。
その顔を見て、僕は察した。
来たんだ、レティシアはここに訪れたんだ。
考えてみればそうだ。
自分で手紙をここに預けに来たって何もおかしくはない。
「あ、レティシア、1人だった?」
城を抜け出した時点でたぶん1人だろうと思うけれど、それはそれで心配だ。
未来の花嫁が1人きりなのはすごく僕的に困る。
変な輩に絡まれたら女の子だし、いくら元気いっぱいのレティシアだって振り解けないかもしれないじゃないか。
それだったら、連れがいる方がいい。
男だったら嫌だけれど。
「えーとここに来た時は……1人でしたけど」
「けど?」
「……連れがいる」
「そう、まあ一応よかっ」
「かもしれない、です」
「かも?」
「うーんと、し、知らないです!」
「ここまで言って知らないってずるいよリーシャ! 連れはいたの?」
リーシャの肩を掴んで揺さぶれば、彼女はうぬぬ、と唸った。
真剣に彼女の瞳を覗き込めば、彼女は何かを吹っ切るように声を張り上げた。
「す、すんごくかっこいい男の人と一緒でしたっ」