瑠璃色の姫君
もっとも大抵の者は、僕が城を抜け出していても、いつも通り街の散策なのだろう、と考えるはずだから、夕方までは人目を気にしながら歩かなくても大丈夫なはずだ。
「さて、まずは服装をどうにかしようかな」
王子です、と言わんばかりの輝いた装飾のなされた服を摘む。
動きにくいし、ただただ目立つだけだ。
旅に相応しくない。
「どこかいい店あるかなー…」
頭には、街中にある綺麗なドレスを売っている店しか思い浮かばない。
地味な色の服が欲しいんだけどなぁ。
「ん〜……」
1人、腕組みをして唸っていると、鈴のような声が聞こえた。
「街はずれの隠れ家みたいな服屋さんはどうかな?」
「あ! ガレットの店か、いいね!」
パチン、と指を鳴らして声の方へ振り向けば、そこには見覚えのある、くるくるの髪の少年。
「あれ? なんでいるのかな?」
「えへへ、付いて来ちゃった」
少年は、褒めた訳でもないのに花が咲いたように笑って照れている。
「はぁ、付いてくるなよ…」
思わずため息がこぼれてしまった。
なかなか手強い少年に驚きを通り越して呆れてしまう。
この調子だと、付いてきてもいい、と言うまでどこまでも追いかけられそうで地味にゾッとする。