瑠璃色の姫君
「明日にはここを出る!」
「え、でもフリュイが……」
僕には今、時間が大切だ。
一刻も早くレティシアを見つけなくてはならない。
「熱が下がらなかったら置いて行く」
「だ、だめです!」
「時間が惜しいんだ」
無理やり結婚するなんて絶対嫌だ。
完全にレティシアの心を僕のものにしてから結婚したいんだ。
そうすると、見つけ出してすぐに結婚という訳にはいかない。
もっと時間が必要だ。
早く行動して余ることなんてないと思うし、そうだとしても早いに越したことはない。
「僕は、レティシアを一番に考える!」
レティシアの為なら、フリュイを置いて行くことも厭わない。
多少は心苦しいけれど。
力強く言い放った僕。
そんな僕を、リーシャは睨みつけて
「フリュイの気持ち考えろ、馬鹿!」
先ほどの僕よりも大きな音を立ててカウンターから立ち上がり扉を開けて店を出ていった。
その剣幕に呆気に取られた僕は、騒ぎを聞きつけて降りてきたゼノに指図されたことを、心の中で反復していた。
「リーシャは俺に任せて。兄ちゃんはフリュイをお願い!」
飛び出していったゼノ。
その扉を呆然と見つめる僕は、反復していたその言葉にハッとして、階段を登った。