瑠璃色の姫君
階段を上りきって、フリュイが眠る部屋の前で立ち竦む僕。
たぶん、ここで5分くらいはこのままにしていると思う。
フリュイの様子が気になるし、早く側についてやりたい気持ちもあるのだけれど。
フリュイを置いていっても厭わない、なんて考えてしまっていた僕は変にドギマギしていた。
フリュイに合わせる顔がない、と唐突に思ったのだ。
明日までにフリュイの熱が下がらなかったら?
置いていく、と軽々しく言ってしまった。
少し考えれば、フリュイを置いて行くことなんて出来そうにないことに気付く。
もう既に、この旅にはフリュイが必要不可欠であることは自分が一番わかっているはずだったのに。
「あー僕の馬鹿……」
リーシャ。
君の方が僕のことを、それからフリュイのことをわかっているようだね。
大声で怒鳴られて当然だ。
確かに、僕の中での一番は変わらずレティシアだ。
それは変わりない。
だけど、フリュイが大事でないと言えば嘘になる。
彼は僕の大事な友人でありながら、僕に付いてきてくれた相棒なのだから。
あの言葉は、撤回しなくては。
時間は大切だけど、フリュイも大切だから。
気持ちが固まったので、覚悟を決めて小さく部屋の扉をノックする。
「フリュイ、入るよ」
寝ているだろうから聞こえてないだろうけれど、そう声をかけて僕は体を部屋の中へ入れた。
部屋の中は、ゼノの頑張りが目に見えるようだった。
保湿されている部屋は、息がしやすい。
ベッドに近づくと、枕元に佇む鷹のルディと目が合った。
姿が見えないと思っていたけれど、どうやら彼はフリュイの側で見守っていてくれたらしい。
「ありがとう、ルディ」
鳥なのに僕よりもちゃんとしている彼に、少し笑みがこぼれた。
そうして僕は、ベッドで眠るフリュイに目を向けた。