瑠璃色の姫君
……あれ?
目に見え飛び込んできたその人間を見て、僕はピタリと動きを止めた。
「え……?」
焦りながら目を擦れば、視界の先にはすやすやと寝息を立てるフリュイがいた。
……ん? なんだったんだ。
一瞬、フリュイが違う人に見えた気がしたのだ。
でも違った、勘違いだ。
良かった、気のせいだった。
あー驚いた。
ふう、と一息ついて、僕はベッドの脇の椅子に座り、フリュイの額の上にあるタオルに触れる。
それは乾いていて、僕はフリュイの額からタオルを取り、水につけて絞ろうと考えていたら、
「……うわっ」
その手が、パシッと掴まれた。
「……バベル?」
「うん」
フリュイが熱で重たそうな瞼を開けて僕を見上げていた。
赤い頬が、その潤んだ瞳が、なんだか色っぽく見えて少しドキリとする。
子供なのに男のくせに、僕を誘惑するなんて、生意気。
ゆるゆるとフリュイの手を掴まれていない方の手で放し、照れ隠しのように僕は水面器に浸される水の中へタオルを突っ込んだ。
「バベル」
「んー?」
「ありがとう」
「これくらい、いいよ」
タオルを力一杯絞って、フリュイの額に乗っける。