瑠璃色の姫君
口元は笑っているくせに、僕はそんなことを思う。
やっぱり、あの謎の動悸は嘘だったんだ。
「引っ張んな、フリュイ」
「わぁー! 王子さんがムッとしておられるーっ」
きゃー、とわざとらしく声を上げて僕から逃げるフリュイ。
そうそう、僕らの旅はこうでなきゃ。
逃げていったフリュイに追いついた僕は、地図を広げた。
「次はどこ行くの?」
「んーとりあえずはオリーヴェンの中だけど、どこにレティシアはいそうかな」
リーシャから聞いた話だと、レティシアはシュトラント側には向かっていないらしい。
となれば、オリーヴェン側だという事で。
その中で彼女が行きそうな場所を地図で探す。
と、目をうろつかせていればフリュイの人差し指が、ある場所を指した。
「ここ行きたい!」
「えっ、そこは治安悪いとこ通るからあんまりオススメしないんだけど……」
でも、行きたいと思うのはよくわかる。
それにそこはレティシアとの思い出の場でもあるから尚更だ。
「治安悪くても行きたいー」
「うーん…」
どうしようかな、悩む。
ここで言う治安が悪い、というのは悪い人間がいる、ということだ。
要はそこは下町といったところであり、そこを通るだけで危険が伴うかもしれないのだ。