瑠璃色の姫君
「瑠璃姫のレティシア様を探しにオリーヴェンまで行くんでしょ? 連れてってよ」
軽く聞こえる言葉に、若干ムッとした。
「なんで僕が」
「王子様は優しそうだし、旅って楽しそうだからさっ」
るんるん気分の少年の瞳には、旅に対する憧れが詰まっているようだ。
「……そんなに甘いもんじゃないよ」
「うん、大丈夫。剣術使えるから安心して」
「……へぇ」
「だから、いいでしょ?」
僕は、じと目で少年を眺める。
細身の体は、とてもじゃないけど剣術なんて出来そうにない。
偏見だけど。
「お兄ちゃん、小さいからってバカにしないでほしいな。なんなら勝負する?」
腰につけていた鞘から剣を出す少年。
最近の子供は物騒だな、なんて頭の片隅で思いながら僕は首を振った。
それを見て少年はつまらなさそう口を尖らせながら、剣を収めて間延びした声を出した。
「自分の身は自分で守れるしさぁ、気にしないでくれていいから連れてってくれない?」
「……いや、ダメだ」
「えー」
自分の身は守れる、とは言っても少年は子供だ。
もしもだが、大男とか大きな動物との勝負になったとしたら、1人ではどうしようもないだろう。
僕の力が問われることになる。
ちなみに僕はぶっちゃけて言うと剣術に自信がない。
上手いやら強いやら褒められたことはあるけど、僕自身としてはすごく自信がない。
それにやっぱり少年の身の保証を問われた時、僕には到底、保証なんて出来ない。
だから、ダメだ。
とにかく、連れて行くべきではない。