瑠璃色の姫君
「まあとにかく、馬車乗りの受付に行くぞ」
「うん!」
てくてくと歩いて着いた、近くにある馬車乗りの店の入り口の布をめくり、その中に僕らは入った。
「すみませーん」
「はいはーい、いらっしゃい!」
ふくよかな体をしたおばさんが僕らを見て微笑んだ。
優し気で温かさを感じて、聖母みたいなんて思った。
「プラネタリウムまで」
鞄から金が入った袋を取り出して、レジカウンターに置く。
少し軽く思えたけれど、気のせい。
「ぼっちゃん、これじゃあ足りないよ?」
「えっ」
気のせい、じゃなかった。
慌てておばさんから袋を取り返して、その中身を覗く。
……ああ、わかった。
ゼノが僕の鞄を漁っていたのを思い出す。
高価そうな、だけど僕には何の価値もないからと思って持ってきた指輪は、たぶん彼が持っているのだろう。
どうせリーシャにあげてその指輪で釣るつもりなのだろう。
なんと姑息な。
心なしか金が減っているのは、リーシャが宿泊料とカフェで楽しんだ紅茶の代金を抜き取ったからだろう。
そこは友人だからという事で無料提供とは行かないのか。
同じ古くからの友人でも、ガレットとは大違いだな。
2人とも、ちゃっかりしてやがる。
ちくしょう。