瑠璃色の姫君




ぐぬぬぬ、と歯を食い縛る僕をフリュイが覗き込んで、肩をすぼめた。



「んじゃ、おばちゃん」


「なんだい?」


「この人が1日馬の世話をするから、それでチャラにして?」



えっ、ちょっと待て。


ドンと背中押されて一歩前に出る僕。


この人って僕のことなわけ?


その前にそんな時間ないと思うんだけど?


レティシアの身に何が起こるかわからないじゃないか。


早く見つけ出さねばなのに。


一刻を争うと思っているのだけれど。


あれ、そんな風に思ってるの僕だけ?



「ほぅ、それはいいね」



良くないです、聖母なおばさんー!



「それじゃあ、ぼっちゃんには頑張ってもらおうかね」



ええええ、嫌なんですけど。


……でもここでは逃げられないらしい。


おばさんとフリュイからの視線が痛い。


痛すぎる。我慢できない。無理。



「やってくれるね、ぼっちゃん?」


「………ハイ」



渋々ながら頷いてしまった僕。


なんてことだ。


僕、王子なのに。


人気マックスな美しい王子って言われてるのに。



いたずらっ子な笑い方をして僕を指差すフリュイ。


クソガキめ。


人に指を指しちゃいけません、と習ってないのか!



「バベルさん、頑張ってくーださいっ」


「むっかつく」


「きゃははは」



はめられた僕は、その気味の悪い笑い声を聞きながら馬の世話へと向かうことになってしまった。




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