瑠璃色の姫君
「え、何? 変なこと言ったっけ?」
言ったよフリュイ。
なに気付いてないふりしてるんだよ。
と思ったのだが、未だに釈然としていないあたり、本当に初めて塩おにぎりを食べたのだろう。
某人気アニメーション映画であんなにも泣いて食べていたとても素敵な食べ物、塩おにぎりを知らないとは。
なんということ。
どんな生き方をしてきたのだ。
本当に貴族なのか?
もしかしたら、塩おにぎりでさえ食べられない苦しい生活をしていた、という方かもしれない。
そんな可能性が出てきてしまった。
「ふーん、うま。おばさん、おかわりほしいな」
「……あ、ああ。ちょっと待ってね」
我に返って、奥へ引っ込んだおばさん。
フリュイは未だに呆然と考えを募らせる僕がさっき食べようと手にしていたおにぎりを僕の手に握らせたまま、口を近づけた。
「いただきまー」
「……」
「いいの? 食べちゃうよ?」
「……」
「あー」
「ま、ままま待てい!」
寸前のところで、彼の頭を押して動きを止めさせた僕は、自分の分のおにぎりが無事であることを確認した。
「やーだー食べるー」
「やーめーろーっ」
「うぬぬぬっ」
グググ、と僕の手を押しのけてこようと頭突きを繰り返すフリュイ。
だいぶ耐えた方だと思うけれど、結局はフリュイの力が強くて片手では堪えることが出来なかった。
「んまー!」
僕の手からおにぎりを口にして頬張るフリュイ。
せめて自分の手で食べてほしいんだけど。
彼曰く、手を汚したくないらしい。
だからそのままキープしとけと言われてしまったのだ。