瑠璃色の姫君
馬車の中に乗り込むと、髪を馬のように一つでくくったポニーテールの運転手と目が合った。
前が空いていて、運転手が僕らの方へ振り返っていたのだ。
「行き先は、プラネタリウムですよね」
「……」
「お客様?」
「あっ…ハイ?」
いかん。いかんいかん。
思わず運転手を惚けて見てしまった。
「そうでーす、プラネタリウムまで!」
横に向かいに座ったフリュイが返事をしてくれて、僕をじいっと見つめる。
悪かったよ、フリュイ。
レティシア以外に惚けるなと言いたいんだろう?
そんなに怪訝な顔をしないでくれ。
「では、参りますよ」
その一声で、馬車はゆっくりと動き出す。
窓際によって、外にいるおばさんにフリュイが手を振るのが見える。
僕もそうすべきなのだろうけれど、目線は運転手の彼女から外せなくて。
「さっきから何なの」
手を振り終えてストンと真ん中に座ったフリュイは、僕をじとっと見て面白くなさげに言った。
「あの子、レティシアに似てて」
運転手の彼女を指差して言えば、後ろ姿もどことなく似てる気がしてくる。
もしかしたら、レティシアなのかもしれないー……!
「は? 全っ然似てないでしょ!」
「へ」
「バベルったら、どこ見て言ってんの」
「………」
えっと……ハイ?