極妻
「ま、間に合った…」
全速力で走り何とか入学式に間に合った私。
昇降口の所ではクラス発表の紙が貼り出されたくさんの人達が群がっている。
「ん~。見えない…」
背が154㎝と昔からちっちゃかった私は目一杯背伸びをしても全然見えない。
もうちょっと前の人しゃがんでよぉ。皆高すぎて見えないよぉ…。
そんなことしている内に足がもつれバランスを崩した。
「あっ!」
倒れる!
「…おっと」
思わず目を瞑った私の背中にはコンクリートの衝撃ではなく、何か柔らかいものに当たってそのまま受け止められた。
「大丈夫?」
「…え?」
見上げると日の光りに照らされて輝くばかりの笑顔を浮かべた好青年が私を見下ろしていた。
…うわぁ。背たかぁい…。
「ってうわっ!?」
今更ながらに自分の置かれている状況を思い出して赤面しながら飛び退いた。
「ご、ごめんなさいっ!」
いまだにクスクス笑っている男の人は制服についた埃を払い落としながら、
「ああ全然大丈夫。それよりも怪我はない?」
と逆に問い返してきた。
「ぜ、全然大丈夫です!ご迷惑おかけしてありがとうございましたっ!」
テンパりすぎてハチャメチャな言葉になってる。
ご迷惑おかけしてありがとうございましたってなんだよ…。
それでも男の人は笑顔のまま
「じゃ気を付けてね」
と、手をひらひらさせながら去っていった。
……かっこいい……。
私はしばらく見とれて後ろ姿を見送った。
…っは!こんなことしている場合じゃなかった。
入学式に遅れちゃうっ!
私は急いで校舎の中に入っていった。