チェロ弾きの上司。

そんななか、今日は金曜日。
明日明後日はお休み!
やったー! いっぱい楽器弾ける!

と浮かれていたら、業務終了時刻間際、真木さんに応接室に呼び出された。

何だろう……。

「まあ、座れ」

はあ。

「望月、Webデザイン覚える気、あるか?」

はっ?

「前職、印刷会社でデザイナーしてたんだろ。Webデザイン覚えるのはそんなに苦じゃないと思う。
まあ、はっきりいえば、人手が足りないから、望月のこと戦力にしたいと思ってる」

……びっくりした。
……声をかけてもらえたのはすごくうれしい。すごくすごくうれしい。

……でも。

戸惑うあたしに、真木さんは続ける。

「手当ても出て給料上がるぞ。楽器の調整や毛替えの頻度も上げられる。いい弦だって買えるし、金貯めていい弓だって買える」

もしかして、楽器のメンテナンスさえ、ろくにできないあたしの経済状況、気にしてくれてた?

「事務職はパートを採用しようと思ってるから、勤務時間は心配することない」

真木さんが、気を遣ってくれてるのは伝わってきた。

すごくありがたいし、うれしい。

真木さんと一緒に仕事ができる。
それは、とてもキラキラしていて、魅力的で……眩しい。

喜んでハイと返事できたら、どんなにいいだろう。
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