チェロ弾きの上司。
あたしたち女性陣の昼休み終了と入れ替わりに、男性陣6人が席を立った。
社長がみんなに声をかける。
「オレ、今日はちょっと別口」
「はーい」
「行ってきまーす」
男性陣が外ランチに出かけていく。
社長も程なくして書類の入ったカバンを提げて出ていった。
よし、気持ちを切り替えて、午後からも頑張ろう。
今日は8月末。月末は、やることが山のようにある。
ショックを引きずっている暇はない。
男性陣がランチから戻ってしばらくして、社長が戻ってきた。
が。
ひとりじゃなく。
ああああーっ‼︎
さっきの綺麗な絶対音感男っ!
やっぱりお客様だったんだ……!
どうしよう。『おたくには失礼で音痴なスタッフがいる』なんて理由で商談がうまくいかなかったら……。
懲罰。減給。解雇。
ネガティブな言葉が頭をぐるぐる回る。
「みんな、ちょっといい?」
社長が声をかけたので、みんな、何となく、起立。
「こちら、来週からうちでWebディレクターをしてもらうことになる、真木。俺の大学の後輩。大手にいたのを俺が引っこ抜いてきた」
ええええっ⁉︎
「よろしくお願いします」
絶対音感男、改め、真木さんはみんなに軽くお辞儀をした。
お客様じゃなくて社員なのかー⁉︎
くらり。