チェロ弾きの上司。

あたしたち女性陣の昼休み終了と入れ替わりに、男性陣6人が席を立った。

社長がみんなに声をかける。
「オレ、今日はちょっと別口」

「はーい」
「行ってきまーす」

男性陣が外ランチに出かけていく。

社長も程なくして書類の入ったカバンを提げて出ていった。

よし、気持ちを切り替えて、午後からも頑張ろう。
今日は8月末。月末は、やることが山のようにある。
ショックを引きずっている暇はない。



男性陣がランチから戻ってしばらくして、社長が戻ってきた。
が。
ひとりじゃなく。

ああああーっ‼︎
さっきの綺麗な絶対音感男っ!

やっぱりお客様だったんだ……!

どうしよう。『おたくには失礼で音痴なスタッフがいる』なんて理由で商談がうまくいかなかったら……。
懲罰。減給。解雇。
ネガティブな言葉が頭をぐるぐる回る。

「みんな、ちょっといい?」

社長が声をかけたので、みんな、何となく、起立。

「こちら、来週からうちでWebディレクターをしてもらうことになる、真木。俺の大学の後輩。大手にいたのを俺が引っこ抜いてきた」

ええええっ⁉︎

「よろしくお願いします」

絶対音感男、改め、真木さんはみんなに軽くお辞儀をした。

お客様じゃなくて社員なのかー⁉︎

くらり。


< 11 / 230 >

この作品をシェア

pagetop